順逆無一文

第68回『バイクで生活してますが、何か?』

 誰もが利用する公共の施設なのに、「駐車場・駐輪場はございませんので、公共交通機関をご利用ください」って、まるで当たり前のようにしれっと表示してるなんて、おかしくないですか。公共の施設なら、利用者のために駐車場・駐輪場も整備する努力をするのが当然であって、クルマやバイクでなんぞ来るな!って。「努力不足で誠に申し訳ありませんが…」の心遣いがみじんも感じられない表示ばかり。
 
 皆さんも毎日のごとく不快、不便な思いをされていることでしょう。自動車関連の税金はあれこれと、ふんだくるだけふんだくっておきながらこの木で鼻をくくったような仕打ち。あり得ませんね。一私企業ならともかく、住民へのサービスのために存在する施設、組織の考え方として。でも何が問題かって、あまりに当たり前に次々と体験しすぎて、誰も、それをおかしいと思わなくなっているのが最大の問題でしょうか。
 
 その役所に、何とか電車で一駅圏内の距離に駐車場を見つけて用事を済ませた帰り道。ふと、「この道ならあいつの所に寄って行けるよな」と旧知の友の所へ寄る算段を。でも時間は真っ昼間。しかもその場所は駅からほど近い商業地区。その時点で諦めました。バイクを止めるところが思い浮かばないんですね。かつて、ちょくちょくと、さしたる用事もなく顔を出していたのは、バイクだったら停めるところに困らないからだったんですね。
 
 知人宅に寄るのを諦めての道すがら。新しい自転車屋さんができているのを発見しました。バイク屋さんじゃなくて自転車屋さんです。残念ながらバイク屋さんが新しくできることなどまずめったになくなってしまいました。次に通った時には無くなってしまっていた、の方は日常茶飯ですが…。と、その自転車屋さん、都内の店舗のご多聞に漏れず自転車は数台置けるスペースがあったのですが、クルマはもちろんバイクも駐車は無理。路駐するのも歩道に停めるのも迷惑。その店はせっかくのお客さんを一人逃してしまいましたね。ま、どうせ冷やかしで金にならない客ではありましたが。
 
 というわけで、用事を済ませたのみでどこにも寄り道せずに戻ってきました。これが壊滅状態ながらそれでも細々と生き延びている都市部のバイク乗りの現状ですね。原付二種の若い方がたはそれに比べればまだ元気満々です。
 
 ただ用事を済ませることだけしかできないバイクでは、生活を共にする存在としてはメリットがほとんど無くなってきています。まあ、暑かろうが寒かろうがバイクに乗ることで心の平穏をかろうじて保っていることを考えれば文句は言えないのですがね。それにしても、駐車場を探す手間と、ほぼ一駅分くらいは歩く覚悟がないとやっていけないって、日ごろの超運動不足を解消するように考えていただいているのでしょうね、お役人さんたちに。
 
 そこかしこに見受けられるちょっとした空きスペースで駐禁看板に「二輪車を除く」の補助標識を復活してくれるだけで、状況は劇的に変わるはずなんですがね。まあ、二輪車をとにかく街中から駆逐したがっていた方々からすれば、今の現状はまさに狙った通りの状況なのでしょうけど。
 
 日本の産業の発展を底辺で支えてくれたバイクにこんな仕打ちをしていると、必ずしっぺ返しが来ることを予言しておきましょう。
 
               ※
 
 今月も“困ったちゃん”たちは西に東に大活躍でした。
 
 パトカーといえば事件発生時には法定速度もなんのその、で暴走いや失礼緊急走行するのですから、当然のこと運転技術は相当なもの、と信じてますよね我々市民は。ところがそうでもなさそう。な~んだ、普通のドライバーと大して変わりないじゃないか、のニュース。
 
 6月11日、熊本県警のミニパトカーが県道を走行中、右折しようとして何と市電と衝突。双方にけが人が出なかったのが幸いですが。相手は市電ですよ。周りを確認しなかったのでしょうか。緊急走行だったのかどうかは伝えられていないのですが、多分通常の走行だったのでしょう。市電も緊急走行を見れば徐行してるでしょうし。
 
 6月29日、神奈川県警のパトカーもやってくれました。こちらは110番通報を受けて緊急走行中でした。赤色灯を点け、サイレンも鳴らしながら赤信号の交差点を直進しようとして右側から進行してきた乗用車に衝突してしまった、というもの。乗用車のドライバーが、パトカーが近づいてきているのに気が付くのが遅かったのが原因のようですが、緊急走行中のパトカーといえど周りの我々“どシロート”の動向には十分注意してくださいね、の事故。ちなみに運転していたのは18歳の高校生とのこと。どんな初心者やご高齢者が走っているかも分からないので周りに注意は必須です、パトカーの警察官さん。ライダーにとっては生き残りの基本中の基本ですよ。
 
 こちらは、そのバイクが絡んだちょっと嫌なニュース。
 
 6月6日、都内でスピード違反をしたというバイクを追跡中のパトカーが、あろうことかそのバイクに追突。しかもそのまま数十メートルにわたってバイクを引きづってしまったというもの。バイクを運転していた40代の男性は病院に搬送され「命に別状はない」の発表。まるでアメリカの警察がやりそうな荒っぽい取り締まりですね。スピード違反の取り締まりから逃げるライダーもライダーだが、「逃走していたのが急に止まったから」とか「わざとブレーキ掛けた」などと、事故はうやむやにされてしまうのでしょうか。よく聞く「これ以上追いかけると事故を起こす可能性があるから」などと諦めてしまうケースを耳にしますが、逆にこんな取り締まりも問題ですよね。
 
 あまりに“普通の人”たちが警察官をやっていることに不安を感じます。
 
 今年の春に乗用車で高校生をひき逃げしたとして書類送検された福岡県警の元署長が起訴されたのだが、被害者の高校生が「大丈夫です」と言ったということから、ひき逃げの道交法違反の罪の略式起訴のみで、自動車運転死傷処罰法違反罪については不起訴とされたという。「諸事情を考慮した」そうなのですが…。諸事情とは「3月に定年退職した元署長への退職金支払いが保留中。罰金刑以下の罪が確定すれば、県条例に基づいて全額支払われる見通し」のことなのでしょうか。
 
 以前にこのコラムでもお伝えした、昨年12月の北陸自動車道で一般車両4台を巻き込んだパトカーの横転事故。パトカーの安全運転を怠ったとして石川県警高速隊の巡査長が起訴されていましたが、「ハンドル操作が不能になり、車を横転させたことは認められるが、運転に安全義務違反があったとは言えない」と不起訴に。パトカーなら横転するような運転でも問題無しとされたということです。被害にあった方々でなくとも呆れてしまいますが、これも我が国の検察の実情でしょう。
 
 長野県警では、スピード取り締まりに引っ掛かったのが警察官と分かり、事件処理せず見逃していた疑いがあることを6月8日のマスコミの取材で発覚。それも取り締まりに当たった複数の署員が関与していたとされているというのだから何をかいわんや。いよいよ警察への信頼も地に落ちてきた。パトカーで事故起こしてしまったケースなど“警察官も人の子”らしくて許せる気になってしまうほど、比べようのない酷い内容ですね。
 
 三重県警では40代の巡査長が5月にひき逃げ事故を起こし書類送検されていたのに県警は情報公開せず。6月15日、京都府警の巡査はスピード違反取り締まりの停止命令を無視して逃走約200メートル先で追突事故を起こして現行犯逮捕。北海道警の20歳の警官2名を酒気帯び運転で逮捕。バーベキューにカラオケ店で飲酒後運転していたもの。
 
 まあ、これぐらいしておきましょう。キリがないです。“人の子”でも仕方ないですが、だったらもうちょっと襟を正しましょう。日々些細なことで取り締まられている一般ドライバー、ライダーは、もうちょっと気を使って暮らしてるんですよ。生活かかってますから。取り締まる側の方には分からないでしょうけど。
 
(小宮山幸雄)
 


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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