バイクの英語

第53回「put it in your pipe and smoke it」

昔からそう決まっていた、なんていうものは定期的に見直す必要がありますね。変化するのはエネルギーがいることですが、より良くしていこうというのは人類にとって自然なことのはずです。特にそれが訳の分からない規制だったりする場合、むやみに変更や撤廃はいけませんが、よくよく考えて、多方面から検討し、最良のアップデートをしていくのは良いことだと思います。

 大真面目にスピードの話をします。スピードの話というか、国内のスピードリミッターって要らないじゃないか、という話なのですが。

 みなさんご存知でしょうけれど、日本での法定最高速は高速道路で100キロ、一般道では基本60キロですね。中には有料道路などで80キロというケースもあるみたいですが、レアでしょう。ところが、この速度制限を大幅に超過できる乗り物は大変多いです。むしろ原付や重機、大型トラックの類を除けばほとんどの乗り物が100キロ以上は優に出そうですね。ちょっと速い乗り物だと、180で効くリミッターまでもわりにすぐ出ちゃいます。特に大型バイクはそういうのが多いですね。なかなか出す環境はないですが、環境が許せば180なんてすぐ出る性能があるのは周知の事実です。なんと言おうと、これが事実。出るんですよ180なんて何の苦もなく。そのスピードははっきりと非合法ですが、そういうスピードが出る乗り物は、ちゃんと合法的に売られています。

 公道でどういうスピードを出すかという話は、今やコンプライアンスだとかなんだとか色々あるため明言しにくいですが、逆に「決して速度超過しません。100キロ以上出したこともない!」なんていう人はまずいないわけで、よって我々一般のドライバー・ライダーは大なり小なりみな同じ穴の狢。他人が出したとか出してないとか、そんなスピード出しちゃいけないとか、出したって言っちゃいけないとか言いあっているのは無意味です。そもそもSNSとかに書いたり、動画をアップしちゃったりするから暇を持て余してる人たちに叩かれるんだ。普通にリアルに会って話しているバイク仲間の中で「イヒヒ、このまえ湾岸で170出したぜ!」なんて言い合っているのが花でしょう。適当に話を盛れるし、お互い話半分で聞いてるし、第三者から変な茶々も入らないわけですから。

 ということで公道とはちょっと切り離しての話としますが、スピードの話をするとどうしても引っかかってくるのが速度リミッターの存在です。180という速度はいったい誰が決めたのか、そしてどういう裏付けでそのまま180という速度で継続されているのが良くわかりません。日本の道路状況を鑑みた場合、180までなら何かあっても、なんとなく何とかなる速度域ということなのかな? なんていう受け取り方だってできなくもない。本当に速度を縛りたいならば、追い抜きなどの一瞬の速度超過やメーター誤差についてのアソビを考慮しても110~120辺りでリミッターが効いても良いでしょう。ところが国内のリミッターは昔から180。これについての整合性はどうなっているのかわかりません。SNSだとかで個人のスピード自慢を叩く人たちがいるのに、このスピードリミッター制度について誰も噛みつかないのはなぜなのだろう……。

 環境規制や騒音規制が国際規格と共通になったおかげで、国内にフルパワーの大型&超高速オートバイがどんどん投入されてきました。ハヤブサやCBR1000RR、そして他社からも出る様子です。200馬力とかある乗り物ですよ。180なんて2速で出ちゃいます。そしてちゃんとリミッターが効いちゃいます。そもそも200馬力もある乗り物の性能をフルに味わおうと思ったらサーキットしかありません。底知れぬパワーと豊かなトルクを使って低回転域や低速域でも楽しめるという向きもあるでしょうけど、そういうバイクは他にいくらでもあるわけで、ハヤブサはともかく、CBRなどのスーパースポーツ系はやっぱりサーキットに行きたいところ。ところがそのサーキットではリミッターが効いちゃってリミッター未装着の600ccとかにぶっちぎられるっていう悲しい結果が待ってます。

 そもそも、公道で180も出す人は二輪四輪含めてそうそういません。オブラートに包まずに実際の交通の流れる速度を書くと、第2東名などでは140ぐらいで流れていることも少なくありません。そりゃそうだ、そもそも140の速度制限にしましょうということで作った道路なのだから、140で走っても一定の安全性が確保されるような設計になっているはずです。

 ところがそんなだだっ広い第2東名でも、160も出しているような人は、逆にそうそう見ません。160といったらあれだけ直線路が続いて見通しも良い第2東名でさえも、やっぱり結構な速度。かなり速度慣れしている人でなければ、ワンミスで大事故につながるでしょう。しかし肌感覚では、140付近まで出す人はいても140以上出している人は少数で、そして160を超えていくような人は本当に稀、というのが実際に第2東名(をはじめとする見通しの良く高いスピードが出やすい道路)を走っていて感じることです。ということは、せっかくつけた180の速度リミッターですが、これが「邪魔でしょうがない」という場面は公道においてはほぼないと言えるのではないでしょうか。

 じゃあ要らないじゃないか、という話です。一部にゴーストライダー的な、公道でのスピードに取りつかれた人もいるかもしれませんが、そういう人は二輪でも四輪でもそもそもスピードリミッターが装着されていない輸入車・逆輸入車に乗るでしょう。そしてそんな輸入車・逆輸入車が普通に、これまた合法的に買えてしまうのだから、ますます国内仕様の180リミッターは無意味に思えてしまいます。

 以上のことをよくよく考えて、パイプに全部詰め込んで、ゆっくりくゆらせ、吸い込み、熟考した上で、筆者は国内の180速度リミッターの撤廃を提案したいですね。しかしメーカーの方にそう申し上げると、難しい、といいます。200万円以上の国産スーパースポーツモデルを買っているのに、サーキットでは型落ちの外車に直線でぶち抜かれるどころか追突される危険すらある。それなのに、「決まりだから」と難しい顔をされてしまいます。特にサーキットでの速度リミッターは危険なため、これを避けるべくスピードリミッターの解除に取り組むアフターマーケットがあるわけですが、マユツバ物も少なくありません。コンピューターの書き換え、なんて簡単に言われますが、国内の、すなわち世界においても最高峰のバイクの心臓部をえぐり出し、町医者に手術してもらっているようなものです。何が起きるかわかったもんじゃありません。よっぽどメーカーと親しい会社でもない限り危なくてしょうがない。

 そんなことだったら、やはりメーカーがちゃんとこの問題をどうにかしなければいけないと思うわけです。日産GT-RのようにGPSでサーキットでのみリミッター解除できる、とか、灯火類を取り外した場合のみリミッター解除ができる、とかいうアプローチもとりあえずは良いでしょう。しかし立ち返って考えると、メーカーがするべきことはこの規制に対する抜け道を考えることではなく、この規制そのものを変更することでしょう。だってここまで書いてきたように、速度リミッターなんてものは実質上無意味なのですから。

 どうどうめぐって、一服してよく考えた結果、以下が最も良案だと思うのですが、いかがでしょうか。

 国内向け、海外向け関わらず速度リミッターは装着しない。しかしスピードメーターは180までしか表示しない。これが結論です。サーキットを走る人は速度なんて気にしません。タイムです。湾岸やアクアライン、第2東名で「こんなにスピードを出したぜ」って言いたい人は、そのスピードがわからなきゃ意味ないわけです。よって、いくらスピードが出ても180までしか表示しないんだったら、そもそも飛ばす意味がない。むしろ表示速度は140でも良いぐらい。140に達したらそれ以上表示しないだけでなく「危険!」とか「SLOW DOWN」などと点滅表示したとしたら、知らぬうちにスピードが出てしまっていることも抑制できるのではないかと思のですがいかがでしょうか。

 技術は日々進歩して、様々な新しい厳しい規制にも対応しながらそれでもハイパフォーマンス化は進んでいます。これってとんでもない技術力ではないですか。それなのに出所のわからない、昔からの、その理由もよくわからない180リミッター規制ばかり盲目的に守って、その技術を楽しむ場に水を差すのはのはおかしな話でしょう。そもそも180リミッターが安全性を高めているとも思えません。だったらもっと安全を喚起できるようなシステムを考え、それを提案し、換えていこうじゃありませんか! もちろん、四輪も含めての話ですよ。それが効果的なシステムならばそれは輸出車や輸入車にも当てはめることができるでしょう。

 こんな長い文章を読んで、喫煙者ならばそろそろ一服ついているころではないでしょうか。タバコはシガレットタイプになってからパカパカ吸えるようになりましたが、古来は自ら手で巻いた紙巻きタバコやパイプで吸うのが一般的でした。よって、ただ箱から出して口にくわえて火をつけるシガレットタイプとは違い、タバコを吸うということにプロセスがあったわけです。だから嗜好品であり、ゆっくりと考え事をしたり議論をする時に吸ったのですね。またパイプや手で巻く紙巻きタバコは放っておくと消えちゃいますから、消えたらまた火をつけて、ゆっくりとくゆらす、と。今のようにスパスパっと吸ってはいオシマイ、ではなかったのです。

 よって難しい問題についてよくよく考える時、それはタバコでも嗜みながらじっくりと考える、というものだったのです。というところから今回の言い回しが生まれました。複雑に絡み合った様々な要素を全部パイプに詰め込んで、あらゆる角度から検討する。火であぶってその要素を体内に取り込んでみる。時間をかけて最良の答えを探す。こういった意味合いで「put it in your pipe and smoke it」という言い回しがあるのです。「この問題をまるごとパイプに入れて、ゆっくりと吸ってみな」、ということですね。問題の本質がクリアに見えてきたとき、悪習や無意味な規制を超越して、最良の結果が紫煙と共にふぅっと吐き出されることでしょう。

 いたずらな批判や上げ足取りよりも、より安全で楽しい交通環境を作りだしていくには、このような取り組みがどんどんなされていくといいのではないかと願う筆者です。

筆者:Minarmie Midisle

数々の交通問題に鋭く切り込んできたジャーナリストだが、近年では自分の趣味であるバイクにまつわる、より身近な疑問などに政治的なアングルから提言を続けている。愛機はVFR750F。締め切りは守るほう。



Minarmie Midisle

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