オオカミ男のひとりごと


HERO‘S 大神 龍
年齢不詳

職業フリーライター

見た目と異なり性格は温厚で性質はその名の通りオオカミ気質。群れるのは嫌いだが集うのが大好きなバイク乗り。
時折、かかってこい!と人を挑発するも本当にかかってこられたら非常に困るといった矛盾した一面を持つ。おまけに自分の評価は自分がするものではないなどとえらそうな事を言いながら他人からの評価にまったく興味を示さないひねくれ者。

愛車はエイプ100、エイプ250、エイプ750?。
放狼記 第二章  Midnight flight

 
成田空港ターミナル内の指定された待ち合わせ場所で道祖神の担当者、そして他のツアー参加者と合流した。集まったのは担当者を入れて7名。あと二人いるらしいがその二人は関空からの出発でドバイで合流するのだという。
搭乗前に出国の手続きへと向かう。そこでは入念な手荷物の検査が行われた。ここまで何から何まで調べられるのは新宿で職質された時以来だ。無事に手続きを済ませいよいよ飛行機に乗り込む。窓越しに見えるエミレーツ航空の機体は世界最大級と言われるだけあって超デカイ。
本当にこれが飛ぶのか!?
そんな初心者丸出しの疑問が頭に浮かんでしまう。そして機内に乗り込む。初めて足を踏み入れる飛行機の機内。自分の座席に座り静かにフライトの時を待つ。
時間になり機内のアナウンスが終わると機体はゆっくりと動き出した。そのままゆっくりと滑走路に向かって進んでいく。それにしても…………
ずいぶんと長い事徐行している。成田の滑走路はそんなに広いのか。
そんなことをぼんやり考えていた時、唐突にジェットエンジンが唸りをあげ、機体は加速を始めた。
いよいよ離陸である。しかし…………
ジャンボ機の加速というのはこの程度のものなのか!?
バイクの加速に慣れているせいか想像していたよりもずいぶんとやんわりしている。
いや、バイクのそれと比較してはいけない。あの巨体がこれだけの加速をしているのだ。初速は鈍くとも離陸時の速度は相当なものだろう。
でなければ、機長の「ごめんなさ~い!」の一言とともに一巻の終わりだ。
オレの席は通路側でしかも夜であるため外の様子はほとんどわからない。
それでも機体が徐々に持ち上がっていくのがわかった。
そして次の瞬間、タイヤの接地感が消えた。
これがバイクや車であるならばコントロール不能といった所だろう。
だが、くそデカい両翼を持つジャンボ機はこれ以上ない安定を保ち空に飛び立った。
オレにとって初めての空の旅。
周りの連中は初めて飛行機に乗るオレに対して
「乗るときちゃんと靴脱いで下駄箱へ入れとけよ」とか
「離陸の時、鬼のような加速するから気ぃ失うなよ」とか
愚にもつかない事を色々と言ってくれていた。
ンなわけあるかい!と返しながらもほんのちょっとだけ真に受けていたのも確かである。
なんせ初ですから。
だが、いざ飛び立ってしまえば搭乗からフライトまでなんて事はない。あっけないものだった。あとはドバイ空港に無事降り立つのを祈るのみである。

さてこれからドバイまで10時間…………する事がない。
それにしても離陸後の機内というものは実に静かである。
夜で景色が見えない事もあって本当に飛んでいるのかどうかも疑わしくなる。
ひとまず映画でも見るかと目の前のモニターをいじくりまわしていた時、機内食の配給が始まった。この時間からのフライトで晩飯が出るとは思っていなかった。
搭乗前に成田空港内にある吉野家で牛丼を食べていたのでさほど腹は減っていない。
しかし、初の機内食である。食べぬわけにはいくまい。
いかにも中東と言った感じのコスチュームのCAさんがオレに問いかける。
「MEAT or FISH?」
オレは少し考えるそぶりをして予習しておいた英語で返す。
「I would like MEAT. 」
するとCAさんは少し困った顔をしてあれこれとオレに語りかける。わからん!
それでも最初のソーリーという言葉でだいたいの察しはついた。
肉、ねぇんだな。
しかしこんな事で不機嫌になるようなオレではない。にっこり笑って「OK!」と。結果、オレの人生初の機内食は選択の余地なく魚料理に決定した。で、問答無用で肉料理を却下され差し出された魚料理はどうだったかというと…………実にウマイ!!
ドリンクにビールをもらい映画を見ながら機内食を食べた。この時点でオレは不思議なくらいくつろいでいた。あとはもう寝るだけである。今宵、生まれて初めて空の上で一夜を明かすのだ。その事実はなんだかオレをとても不思議な気持ちにさせた。目が覚める頃にはドバイに着いているだろう。

ところが世の中、すべて順調とはいかない。予想はしていたがエコノミーの席というのはなかなか快適には寝付けないものである。なんといっても狭い。感じとしては以前に一度だけ東京へ行くのに利用した事のある深夜の高速バスとひじょうによく似ている。
一応、座席はリクライニングさせてはいるものの首が落ち着かない。それともう一つ。
寒いのだ。用意されてあった毛布を掛けてはいるのだが足元がずいぶんと冷える。
あとで教えてもらったのだがこのジャンボ機が飛んでいるのは高度15000mの上空。
外気の温度は氷点下10度、20度といった世界である。
空調により機内温度はある程度、保たれているのだが足元だけは妙に冷える。
うつらうつら、しながらも熟睡には程遠い。そんな中、機内アナウンスでふと我に返った。
どうやら朝飯の時間のようだ。腕時計に目をやると午前6時。つまりドバイ到着まであと2時間とちょっと。乗客に時差をなるべく感じさせないよう機内の窓は閉められている。
そのため外の様子はわからないが現地の時間だとだいたい深夜の1時半くらいでまだ夜のはずだ。朝食をとりコーヒーをもらって一息つくと少し頭がスッキリしてきた。
ドバイまであとわずか。快適とは言えなかったが今まで知らなかった事が実体験として次々にオレの中に取り込まれていく。もしかすると時差ボケすらも体感した時には感動するかもしれない。


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