MBHCC A-1
東尋坊取材ツーリングの巻

「働けど働けど我が暮らし楽にならず、我泣きぬれてカニとたわむる」なんて、昔の有名な詩人が詠んでいましたが(詠んでねぇよ!!)、いったいいつになったらこの国は景気が良くなるんでしょうか!?

とにかくテレビも、新聞も、暗いニュースしかやってないんですよね。

 大企業が数万人のリストラを始めただ、数十兆円規模の赤字決算だ、学生の就職戦線が超氷河期だ、どうしようもない政権与党だ、物が売れないだ、やれミサイルだ、放射能だ、余震だ……あーヤダヤダ、イライラしちゃいます。

 それにマスコミや芸能界なんかにしても、テレビに向かって突っ込みたくなるような、ふざけたミエミエのヤラセやプロパガンダが横行しています。ホントはそれをここで具体的に書きたいのですが、良識ある担当さんにカットされちゃうのは目に見えていますので、やめときますが。

 とにかく、もういいかげんにしてくれ!! って叫びたくなるような、どうしようもないような状態がずーっと続いていて、いやな国になっちゃっています。

 そしてそういった生活に疲れ果てたのか、残念なことに、毎年毎年、約3万人もの人たちがみずから命を絶っているのですよ、この日本ではサ。

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 ワタシ自身はどんなに苦しいことがあったとしても自殺するようなことはないと思っていますが、死にたい、と考えている人やその家族の悲しみ、そして生きる意味とかを漫画で描くことが出来たらって、そういうこと、よく考えています。

 もちろん今の絵柄ではなく、ガラッと絵を変えるか、もしくは原作や小説なんかで表現できればと思ってはいるのですが、まだ実現していません。

 全国にはいわゆる「自殺の名所」と呼ばれる場所がたくさんあります。有名なのが福井県にある「東尋坊」ですよね。実は3年ほど前、その取材を兼ねてツーリングしたことがあるんです。

 時は9月のはじめ頃。いろいろ準備にとまどってしまい、杉並区の高円寺を出発したのが午後2時。甲州街道(国道20号線)を一路、諏訪へと向かいます。

 武川町(北社市)に着いたのが夜7時過ぎ、あたりは真っ暗です。眠気もあった中、地元の温泉「むかわの湯」でひとっ風呂あび、仮眠を取りました。

 9時出発。諏訪ICから中央自動車道に入ります。ムチャクチャ眠いです。途中、小黒川PAと屏風山PAのベンチでまた仮眠を取りました。

 土岐JCTから東海環状自動車道に乗っかります。真夜中なのでワタシ以外のバイクや車はまったくと言っていいほど走ってません。多少怖いような、でも楽しいような、そんなカンジでアクセルをふかします。

 美濃ICを降りたのが午前4時半。体力的にはほとんど限界だったので、また仮眠を取ることにします。以前泊まった事がある、川沿いのキャンプ場(近くの銭湯に言えばタダで使える)に勝手にテントを張りました。


郡上八幡のキャンプ場

国道158号線

穴馬神社
郡上八幡のキャンプ場。タダだけど雨の日には要注意だ。 国道158号線(美濃街道)。車も少なく人家もなく気持ちよく走れるロードだ。 穴馬神社。ギャンブルの神様ではなく、地名なんだとサ。

 8時にスタート。国道156号線を北上し、白鳥から国道158号線へ。ここから福井市までは一本道。ほとんど人家のないような道を快調に飛ばしていきます。

 きれいな姿をした九頭竜ダムを過ぎ、道の駅九頭竜湖で休憩。ここの見所は、15分毎に動いて吼える、親子のでっかい恐竜のフィギアです。必見でっせ!!

 越前大野城がそびえる大野市には午前9時半に着きました。ここは水がおいしい所として有名で「御清水(おしょうず)」は名水百選にも選ばれています。


九頭竜ダム
昭和24年完成の九頭竜ダム。高さは128mの美しいロックフィル(石を積み上げた)ダムだ。

親子の恐竜

福井県大野市

名水百選の御清水
15分毎に動く親子の恐竜。けっこう迫力があって楽しい。 奥越の京都とも呼ばれる福井県大野市。静かでステキな街だったよ。 名水百選の御清水。冷たくて甘くておいしい水だ。

 そして12時ジャスト。やっとこさ東尋坊に到着です。いやぁ、疲れました。駐車場にバイクを止め、まずは腹ごしらえ、そしてあたりを散策です。

 なんか、いかにもおどろおどろしい「自殺の名所」って感じのとこかと思っていたのですが、そんなことはまったくなく、たくさんの観光客の方で溢れた、明るい風光明媚な所でありました。


たくさんの観光の方

海上から見るとこんなカンジ。キレイだよね。

美しくも厳しい、芸術のような風景だ。
たくさんの観光の方でいっぱいでした。 海上から見るとこんなカンジ。キレイだよね。 美しくも厳しい、芸術のような風景だ。

 遊覧観光船に乗って、海上から見てみると、やっぱし迫力ありますね。独特の割れ方をした岩が切り立っていて、すごい高さがあります。案内係のおじさんが「昨日もねぇあの崖から一人飛び込んだみたいで、死体があがってましたよぉ」……なんて笑顔で言ってます。シャレになんないです。

 資料のためにバシバシ写真を撮りまくります。ニュース映像でよく見る「命の電話」を見つけたときは正直ゾッとしました。ここから最後のSOSを発信したのに救いが無くて、その後亡くなった方も大勢いらっしゃるとのこと、本当に悲しいことです。


崖の高さ
人の大きさを見ると崖の高さがわかるでショ!

 観光地に付き物の(?)梅宮某氏の漬物屋があったり、地元の海産物を扱うおみやげ屋さんがあったり、展望タワーがあったり、ま、いわゆるフツーの観光地なんですが、ワタシのように「自殺」を念頭に置いて訪れたとしたら、ちょっと怖いとこなのかもしれません。

 このあと、すぐ近くにある「雄島」にも行ってみました。ここは橋で渡れる島なのですが、島全体が御神域とされていて、時計回りではなく逆方向に回っちゃうと、恐ろしい祟りがあるらしいですよ。みなさんも気をつけてね。


命の電話

雄島

楽しい気分で見るか、苦しい気分で見るか
命の電話。とにかく一度落ち着いてお話してみてください。 奥に見えるのが雄島。フザケて逆回りしちゃダメだよ。 楽しい気分で見るか、苦しい気分で見るか……自然は何も答えてはくれないのであった。

 その日は福井市内のビジネスホテルに宿泊しました。夜中は街中をブラブラ歩いてみます。チンチン電車が走っていてカンゲキです。

 街中にほとんどゴミが落ちてなくて、本当にきれいです。全国の社長の出身地で一番多いのが福井県出身者だとか……まじめで勤勉な方が多い土地柄ということでしょうか?

 一人で居酒屋に入ります。以前から食べてみたかった福井名物「へしこ(さば等の魚の糠漬け)」を注文。かなり辛めなので、お酒のおつまみよりご飯のお供の方がいいかも? でも独特の香りがあって、けっこうおいしかったよ。

 ……てなワケで、せっかく行った取材ツーリングも今のところお蔵入りなのであります。でもいつかは絶対作品にしたいなって考えているところです。


ルリカミド
ルリカミドリ

九州、福岡出身のバイク大好き娘。

ヒマさえあれば相棒のシビちゃん(HONDA CB400SF)とともに旅をしている。

別のペンネームを使い、法律や料理にゴルフ、はては高校受験まで原作付きのハウツー漫画を中心に描いてきたマンガ家であるが、最近では開店休業中との噂も(泣く)……


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