かつてミスター・バイクの誌上を彩った数々のグラビアたち。 あるときは驚きを、またあるときは笑いを、そしてまたあるときは怒りさえも呼び込んだ、それらの舞台裏ではなにがあったのか? 1980年代中盤から1990年代に、メインカメラとして奮闘した謎の写真技師こと、エトさんこと、衛藤達也氏が明かす、撮影にまつわる、今だから話せる(んじゃないかと思うけど、ホントはまずいのかも)あんな話、こんな話。聞きたくないですか。
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今回は1986年、私が苦しいスタジオマン修行が終わった次の年くらいでしょうか。やっと、独り立ちしてお仕事を貰えるようになった頃のお話です。 |
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※注1 私がよく打っていた一発台は、記憶が正しければ台の左上のほうに玉がギリギリ通る隙間があって、そこを通ると次にクルーンがありました。あの「ざわざわ」するギャンブル漫画に出てきた「沼」の原形でしょうか。漫画と違うのはあたり穴以外は蓋がされていて側面の隙間さえ通れば必ず大当たりなるように一般台<※注2>を改造したものでした。 ※注2 今ではほぼ絶滅した一発台でも権利物でもデジパチでもない、チューリップだけの地道なパチンコ台のことです。一般台の革命機、名機ゼロタイガーが登場してからは羽根モノと呼ばれるようになりました。 |
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今回のネタはミスター・バイク1986年3月号。巻頭は「パリダカ、ホンダ1、2、3フィニッシュ!」 | ||
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※注3 モータドライブ=自動フィルム巻き上げ装置。今のカメラは勝手にシャッターを自動でチャージしてくれますが、当時のカメラのフィルム巻き上げは手動が標準でした。重たいモードラが付いたカメラが当時のプロ仕様でした。 |
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どこかにあったんじゃないかと探してみたら出てきました。ヨドバシで買った防水ケース。今でも使えるのでしょうか? 手を入れる部分のゴムは溶けていませんでしたが、どこからか水漏れがあるかもしれません。 | 今回はシートごと大量に写真が発見されたので、こんな写真も残っていました。これが伝説の? ラッコのポーズです。まだ海に入ったばかりで余裕があるようです。 | |
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陸上から望遠レンズで撮影。寒い中での撮影ですが特になんの問題もありません。インストラクター(写真左)もなんの問題もありません。沈没ばっかりでろくに乗れない編集部員(写真右)は問題ですが。 | ||
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当時のモードラは最高でも1秒間で6枚撮れたかどうか定かでないのですが、一回の撮影で6枚撮ったとして、36枚撮りフィルム一本で6回できるから、何とかなるだろうと決めてかかっていました。しかし、1本では終わらなかったのです。 |
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死にそうになって撮った秒間6コマの水中ショット。これは誌面で使われなかったボツカットです。 | ||
フィルムチェンジのため陸に上がると、恐れていたことがおきました。スーツの中の暖まった海水が抜けてしまい、ものすごい寒さが襲ってきたのです。しかし「写っていませんでした、ははは」をやらかすと、おまんまの食い上げなので、寒さに耐え震える手でフィルムチェンジして又寒い海へ戻りました。海中で体が温まるのを待ってから撮影を開始しましたが、歯を食いしばらないとカチカチ歯が音を立て出し震えが全身に伝わり撮影どころではありません。 |
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※注4 ゴミ袋で思い出しました。まだ景気の良かったころ、編集部の年末旅行でニューカレドニアに行ったときの話です。 このコラムでも度々登場するカメラマンの伊勢ひかる、宿泊したホテルの前に海にある小さな小島をみてつぶやきました。「いや〜〜、行ってみたいな〜〜。でも〜〜寸遠いかな〜〜」「あれは遠いよ。無理じゃない。絶対溺れるよ。せめて浮き輪でもないと。やめときな」と引き止めたのですが、思い立ったら我慢のできない伊勢ひかる、ホテルの部屋にあったクリーニング袋を浮き輪にみんなの制止も聞かず泳いで行ったのです。 しばらくすると現地の人が「沖のほうにはシャークがいるぞ」と言い出すではないですか。すでに半分ほど進んでいたので、「サメがでるぞ〜」と叫んでも聞こえません。 それどころか、とんでもな事態になってしまいました。その日ウインドサーフィン大会が開催されていたのです。コースのド真ん中にゴミ袋とともに漂っている日本人……参加者達はちょっとしたパニック状態で伊勢ひかるを避けるように走行していきました。 そんなことにはまったく動じない伊勢ひかる。小一時間泳いで島に上陸し、島の未亡人とちょこっと遊んで(どんな遊びをしたんでしょう?)夕方戻ってきました。 「危なかっただろ」と聞くと「いやあ〜〜、急にウインドサーフィンの人達がこっちに向かって沢山くるんだよ〜〜。何でだろう? 一寸ヤバイかな〜〜って思ったんだけど下手に動かないほうがいいかな〜〜と思ってプカプカ浮いていたんだよね〜〜いやあ〜〜、まいったな〜〜」とのんきなものでした。 みなさんは目の前に島があってもけして泳いでいこうなんて思わないように。 |
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こんな感じで掲載されました。少しくらい苦労が伝わるでしょうか? |
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