②次期二輪車排ガス規制に加えついに新騒音規制も施行——国際基準と同じ規制値に!欧州仕様車のサイレンサーが国内も可に

 実は2006年に国内4メーカーは「将来目標」として——●二輪車の技術基準の国際調和●どこで製造した製品も安全・環境基準に合致——ということを掲げていた。それがユーザーにとってコスト面や安全・環境基準で有益であると。
 そして昨年と今年、それに対する肯定の答えが続々と打ち出されてきた。

 まず最新のニュース。新騒音規制について、国土交通省は国際調和を図った規制値を欧州より1年前倒しして今年1月25日に公布、1月27日に日本では施行開始することを発表した。

 ある国内メーカー関係者は喜びの顔で「これでグローバルモデルを国内に投入していけることになったし、当然投入していく」と語った。

 その新騒音規制とはどういうものなのか。
 二輪車の騒音基準の国際調和については、かねてから国連欧州経済委員会(UN/ECE)の自動車基準世界フォーラム(WP29)において議論が進められていた。日本も国際調和と認証の相互承認を推進するため積極的に参加し、既に「騒音防止装置協定規則(第41号=ECE R41-04)が改訂された。そして2012年4月の中央環境審議会の「今後の自動車単体騒音規則のあり方について(第二次答申)」において、二輪車の加速騒音対策について前記のECE R41-04の導入が答申された。これを受けて国交省は今年1月27日に同規則の施行を開始したもの。騒音防止装置規制の採用に伴い改正されたのは——

◯加速走行騒音試験法について、騒音防止装置協定規則に定める加速走行騒音試験法を導入。
◯改正された騒音規定は騒音値と加速度が比例関係であることから前回加速走行時の騒音値と定常走行時の騒音値から計算される。また規制値は従来の車両区分とは異なり、PMR=Power to Mass Ratio:出力と車重の比で決められ、PMRは<最高出力(kW)/(車両重量(kg)+75kg)×1000>で算出される。これにより規制値は——
●PMRが25以下(50cc相当)で73dB
●PMRが25を超え、50以下(125cc相当)で74dB
●PMRが50を超える(軽二輪相当)では77dB
——となる。
◯近接排気騒音試験法については、騒音防止装置協定規則に定めるものを導入。
◯定常走行騒音規制を廃止。
——など。

 これにより新たに指定等を受ける二輪車(輸入車を除く)=新型車は2014年1月1日以降、継続生産車で2017年1月1日以降に生産される二輪車は新試験方法による新規制値が適用される。輸入車については認証の相互承認の特定装置として型式指定を受けたものと同等とみなされて、R41の認可ラベルなどで認可があるもので近接排気試験の成績が94dB(A)以下の場合については検査に合格しているとされる。

 これにより、何よりの朗報は冒頭の国内メーカー関係者の発言に代表されるように、欧州仕様のサイレンサーを日本国内でも装着できることになったことだ。

 すでにここで既報したように、次期の二輪車排ガス規制等についても国際調和による規制値が日本でも施行されることになっている。前回の繰り返しとなるが、排ガス規制についての経過は以下のとおりだ。

 環境大臣から「今後の自動車排出ガス低減対策」の諮問を受けていた中央環境審議会(鈴木基之会長)は2012年8月10日に第11答申を細野豪志環境大臣に行った。この中には二輪自動車・原動機付自転車(以下、二輪車)の次期排ガス規制等(等は、ディーゼル重量車などについて)について答申がされている。その答申の中で、二輪車の排出ガス、特に光化学オキシダント生成に寄与するHC(炭化水素)の排出量がガソリン・LPG自動車に対して車両当たりの移動量で比較して二輪車のそれが高いことを踏まえ、排出ガス低減対策を進めるとしている。

 排気管排出ガス低減対策:排出ガスの試験については、現行のいわゆる「二輪車モード」から日本も参画する(前記、騒音規制でも登場した)国連欧州経済委員会自動車基準調和世界フォーラム(UN-ECE/WP29)で策定された世界統一の試験方法であるWMTC(Worldwide harmonized Motorcycle Test Cycle )に変更する。

 これによって規制を分ける車両のクラス分けは以下のようになる。

<クラス1>:総排気量0.050リットル超0.150リットル未満かつ最高速度50km/h以下。または総排気量0.150リットル未満かつ最高速度50km/h超100km/h未満の二輪車
<クラス2>:総排気量0.150リットル未満かつ最高速度100km/h以上130km/h未満。または総排気量0.150リットル以上かつ最高速度130km/h未満の二輪車
<クラス3>最高速度130km/h以上の二輪車

 このクラス分けによる二輪車の排気管からの次期排出ガス許容限度目標値(現行より3〜6割低減)=これで日本の規制値も欧州委員会が排ガスについて出したEU指令による法的規制を導入した排ガス規制の「ユーロ5」とほぼ同等になった。この規制は2016年末までに適用を開始する。その適用開始までの間は、現行の二輪車モードによる規制値に対し、WMTCによる等価規制値も答申された。

 これに加え答申は排気管排出ガス規制だけではなく、燃料タンクからの燃料蒸発ガス対策も導入している。この試験法はカリフォルニア州試験法と同じ「ダイアーナル・ブリージング・ロス試験およびホット・ソーク・ロス試験」が採用され、許容限度目標値はガソリン・LPG自動車と同等の2.0g/test。これは既に活性炭に燃料蒸発ガスを吸着させ走行時にエンジンに取り込み燃やす技術が定着(チャコールキャニスタ)していることから大きな技術課題とはならないと言われている。

 さらに二輪車に対して、電気系統の断線等による機能不良を監視する自己故障診断OBD(On-BOARD DIAGNOSTICS:オンボード・ダイアグノシクス)システムの装備を義務付ける。これも既に採用しているモデルもあり大きな技術的障壁にはならないという。これらは2016年末までに運用を開始することになった。

 また、以上の対策は近いうちに市場に導入される予定になっているバイオエタノール10体積%を混合したガソリン(E10)に対応した二輪車にも適用される。

 このように様々な規制値が国際基準と同じにされることになり、従来の国別対処の開発技術コストで大きな軽減化がなされることになる。特に輸出入のメインである小型二輪にとっては大きなメリットとなり、追い風が期待される。

 国内4メーカーは願っていた国際基準調和が「ほぼ実現できた。歓迎したい」としている……のだが、確かに日本もその調和に加わることができたものの、さらに求められるのは「各国が自国の法規に国際基準調和を導入して、製品の仕様が統一されなければならない」という面だ。他の国が独自のエリアや国内法で勝手に基準を作っている場合がある限り、真の国際基準調和とは言えない。国内4メーカーはそれを「どの海外メーカーも国際基準となった日本の基準をクリアーして入ってきていただきたい」という表現で要望している。

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