順逆無一文

第39回『平成26年度税制改正大綱』


 昨年の12月12日、与党から「平成26年度税制改正大綱」が発表された。来春、自動車関連の税金を大幅アップさせようというものだ。


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2 税制抜本改革の着実な実施
(1)車体課税の見直し
税制抜本改革法第7条第1号カの規定及び平成25年度与党税制改正大綱、さらには、「民間投資活性化等のための税制改正大綱」を踏まえ、経済情勢に配慮する観点から、消費税率引上げの前後における駆け込み需要及び反動減の緩和も視野に入れ、国、地方を通じ、車体課税について、以下のように見直すこととする。
 
①自動車取得税(省略)
 
②自動車税(省略)
 
③軽自動車税については、平成27年度以降に新たに取得される四輪車等の税率を、自家用乗用車にあっては1.5倍に、その他の区分の車両にあっては農業者や中小企業者等の負担を考慮し約1.25倍にそれぞれ引き上げる。
また、軽自動車税においてもグリーン化を進める観点から、最初の新規検査から13年を経過した四輪車等について、平成28年度から約20%の重課を行うこととし、併せて軽課についても検討を行うこととする。二輪車等については、税率を約1.5倍に引き上げた上で、2,000円未満の税率を2,000円に引き上げる。
 
④自動車重量税については、エコカー減税を拡充するとともに、その財源の確保及び一層のグリーン化等の観点から、経年車に対する課税の見直しを行う。
平成27年度税制改正において、現行エコカー減税の期限到来に併せ、エコカー減税の基準の見直しを行うとともに、エコカー減税制度の基本構造を恒久化する。
自動車重量税については、道路等の維持管理・更新や防災・減災等の推進に多額の財源が必要となる中で、その原因者負担・受益者負担としての性格を踏まえる。また、その税収の一部が公害健康被害補償の財源として活用されていることにも留意する。
 
以上「平成26年度税制改正大綱」より抜粋
 
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 軽自動車税の項目が一番バイクユーザーに影響してくる改正部分だろう。
 
 大綱だけではあまりよく分からないと思うので具体的に例を挙げて説明すると、来年4月からバイクにかかる軽自動車税が、新車かどうかにかかわらず、排気量別に、250ccを超えるものは、今の4,000円から6,000円に、250cc以下で125ccを超えるものは、今の2,400円から3,600円に、125cc以下で90ccを超えるものは、今の1,600円から2,400円に、90cc以下で50ccを超えるものは、今の1,200円から2,000円に、50cc以下のものは、今の1,000円から2,000円にそれぞれ引き上げますよ、ということ。
 
 原付一種などは一気に2倍だ。有無を言わせず一気に税金を2倍にするなんて、通常ではあり得ない。自分たちの経営努力の足り無さを納税者に押しつける、かつての悪徳お代官様のやっていたことと同じ。バイクユーザーの生活など無視しているとしか考えられない。バイクの駐車問題もそうだ。それまで庶民の生活を支えてきたバイクに対して、ある日を境に「今後は勝手に路上に駐めるな。駐車場に駐めろ!」と。いや、百万歩譲って、その駐めるべき駐車場が存在するならそれでも筋は通っただろう。しかし、バイク駐車場など車の千分の一も存在しないというのに、一方的な強行だった。これほどバイク乗りを愚弄する施策は経験したことがない。かつて暴走族(今は珍走族と呼ぶんでしたっけ)の阿呆どものおかげで一部の道路からバイクが締め出されたことはあったが。いや、それだけじゃない。死亡事故が立て続けに数件起きた、というだけでバイクを通行禁止としてしまった例など、あるにはあった。
 
 今もって国を動かす人間達にとってバイクの存在など、ほとんどイコール暴走族くらいの認識でしかない。ロビー活動して圧力をかけてくるなんてことはあり得ず、さらさら有権者の一人、などという意識もない。国会議員の中でも有志といわれる方々がバイクを取り巻く環境のためになにやら活動してくれているそうだが、こんなふざけた大綱が出てくること自体、どれだけ本気で活動していただいているのか分かったもんじゃない。要はガス抜きのための活動、と考えられても仕方ないのでは。まあ、それらの方々の中には実際にバイクに乗られる方もいらっしゃるようだが、どうせたまの休みに観光地や温泉などに“ツーリング”される程度でしょうから、その日その日の駐車場に困ることもない。彼らがバイク乗りの代表者などと思われてしまっているとしたら大変な迷惑ですね。あくまで“趣味”でお乗りになっている方々の代表でしょう。
 
 また、今回の税制改正大綱の所々にエコカー減税だのグリーン化だのと、流行言葉のように盛り込まれているが、本気で環境を考えるなら今こそバイクの利用促進、環境整備、活用を検討すべきでしょう。
 
 なのに現実はバイクや軽自動車をいじめ放題。無駄に大きな車、無駄に高い車、そしてエコカーにと無駄に新車に乗り換えさせる政策こそを見直すべき。自らは無駄に大きな黒塗りの車にふんぞり返って移動しているから、そんな根源的なことが分かりもしない。その口から環境だ、エコだ、が聞いて呆れる。雨の日風の日も庶民がバイクで頑張って走り回ったからこそ、この日本が敗戦の廃墟から復活できたことなどすっかり忘れてしまっている。
 
 バイクの存在意義を知ろうともせず、バイクを社会から排除しようとしかしていない今の為政者たちは、日本の未来そのものを危うくする存在と知るべし。未だ警察がのさばらせている暴走族の阿呆どもと、「カスタムです」などと爆音響かせてる鼻つまみたちはそんな為政者の手先でしかない。
 
 少なくともわが国を復興させたバイクと、日本固有の理にかなった規格といえる軽自動車を、外圧だかなんだか知らないが、増税だ、規格改正だ、などと様々な力で消滅させようとする輩は、この国の政治の場から排除するべきだろう。
 
 駐車問題に追い打ちをかけるバイクユーザー無視の税制改悪に久々に本気でイラっとしてしまった。放言失礼。 
               ※           
 では口直しに今月も“困ったちゃん”達のニュースを。
 
 トップバッターは何と“当て逃げ”。交通の規範となるべき警察のパトカーがミニバイクをハネておきながら救護せずに走り去ったという。大阪府岸和田署のパトカーがその“犯人”で「人命にかかわる通報を受けていたため、(現場)到着を優先させた」ですって。ミニバイクのライダーの方の人命はどうでもいいってこと。やはり根底に流れるのは「バイク乗ってるヤツはみんな暴走族」の潜在意識だろう。まあ、警察の発表を鵜呑みに出来ないが「前方で蛇行運転していた」らしいのだが。しかし、万が一それが暴走族だろうが、善良な少年だろうが、衝突してしまった以上、まずはなにより救護だろう。
 
 バイク乗り軽視の深層心理はこちらでも。12月2日午前0時頃、佐賀県の市道で暴走族を取り締まっていた佐賀県佐賀署のパトカーが、前から来た原付バイクを停止させようと、無理矢理中央車線を越えて進路をふさいだためこのバイクは転倒。こちらの女性は、暴走族とはまったく関係のない20代の一般女性だった。そんなことされたらほとんどのライダーは転倒してしまうでしょうね。さぞかし恐怖の瞬間だったことでしょう。ちなみに佐賀署は「暴走族を取り締まる時は(通常)行っている行為」と。善良な一般ライダーだったから転倒してしまったわけで、暴走族だったらまんまと逃げおおせている、ということなんでしょう。それが証拠には、TV番組以外で暴走族が検挙されているところを一般市民が目の当たりにすることなど皆無ですからね。一緒になって騒音をまき散らしているだけ?
 
 こちらはパトカーとの衝突により悲惨な結果をまねいてしまったというニュース。11月26日、飲酒検問を突破したクルマを追跡していた兵庫県姫路署のパトカーが交差点で41歳の女性の乗るバイクと衝突。残念ながらこの女性が死亡してしまった。バイク側の信号は青だった。「アナウンスして、減速して交差点に入った」と運転の巡査部長。それが事実だったら衝突を回避できたはず。安全確認できるだけの減速もせず、要するに「どけどけどけパトカーが通るぞ」と特権意識で左右の確認もせずに交差点に進入したってことでしょう。それにしても、このご時世に飲酒運転して取締りから逃げるような本物の悪は捕まえられず、些細な違反でも「しまった」意識を持ってる善良な市民しか取り締まれない警察ってなんなんでしょう。
 
 次はその飲酒運転を警官自身がやってしまった事件。9月にも長崎県警の巡査が飲酒後運転、市道脇の建造物に接触しそのまま逃走した事件があったが、今回は12月12日の深夜、岩手県警盛岡西署の機動隊の小隊長が飲酒後クルマで入浴施設へ向かう途中、建造物や止まっていたクルマなどに衝突し検挙された。ちなみに岩手県警内での警察官の飲酒運転検挙は2013年の1年間で3件目なのだとか。12月16日には、勤務時間外で市道を歩いていた茨城県水戸署の警察官が、飲酒運転のクルマにはねられ重傷を負うという被害者になるケースも。“警察官も人の子”ですか。
 
“人の子”が運転するのですからパトカーだって違反をします。11月18日、秋田県由利本荘署のパトカーが巡回中、一方通行の道路を逆走。たまたま居合わせた通行人に目撃され通報されてしまった。サイレンを鳴らし赤色灯を点けていなければ緊急車両の要件は満たさない(速度違反の取締りのみ必要とあらば赤色灯のみでもOK)ですから当然ですね。赤色灯の点灯だけのパトカーもよく見られますが、あの状態は一般車両と同じ、停車違反とか何か些細な違反でもしているのを発見したら、皆さんもナンバーを控えてどんどん通報しましょう。善良な市民のうっかり違反などでも有無をいわさずキップを切るのが職業の人たちですから、範を示してもらわねば。
 
 この他、11月22日には警視庁亀有署の巡査部長が、ひき逃げ無免許運転の事件を「捜査手続きに自信がなかった」ともみ消し。愛媛県の県内の警察署の警部(県警監察官室が所属氏名を公表せず)が公用車でパチンコ店へ。愛知県警捜査1課警部は暴力団と繋がりがある風俗店のオーナーに自動車の使用者情報を漏洩、などの事件もありました。
 
 締めくくりは読売新聞が1月1日付けで報じた「値上げ分300億円無駄? IC免許証活用されず」のWEBニュース。記事によると鳴り物入りで2007年から導入開始されたIC免許証のデータ照会機能がほとんど活用されておらず、IC化で国民が余分に負担した交付手数料の値上げ分300億円以上が無駄になっているという。そういえば確かに免許証は、現在の法律ではとりあえず「提示」する義務はあっても、データ照合用の端末でチェックされるなんてことはないはず。偽造防止のためだけに導入したのだとしたら実に無駄。どこかの誰かさんが儲けただけってことなのでしょうか。
 
 今年も困ったちゃん達の一年が始まりました。
 
(小宮山幸雄)


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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