バイクの英語

第41回「Gimme a Break! (ギミ ア ブレイク!)」

 ヤマハから新しく出て、すでに大人気になっている「MT」シリーズ。特にちょっと前に出た3気筒のMT-09は大変な人気で、バックオーダーを抱えて浜松はてんてこ舞いというか小躍りというか、いずれにせよダンシングだと噂を耳にしました。

 続いて登場したMT-07もまた、速報を見るとかなり評判が良いようですね。良いことです。

 このMTシリーズのプロモーションアニメというか、「マスター オブ トルク」という動画がユーチューブに流れています。その短編アニメの舞台が国道246号線。神奈川と東京を結ぶ大動脈幹線道路です。

 この国道246は皇居から始まり、3車線や2車線になりながら神奈川県厚木市まで続く、「大動脈」の名に恥じない、交通量が多く、流れも速い幹線道路です。厚木から先は1車線になって普通の道になるんですけどね。

 もちろん速度制限は基本的に60キロ。流れは80キロは普通、夜中はもっと速く流れていることも多々あり。50ccで走るのは怖いぐらいの、大型トラックも含めてビュンビュン流れる道です。でも速度制限は60キロ。東京都と神奈川県を分ける多摩川を渡る246の橋は見通しよく、当然みんな良いスピードで走ってるのだけど、これは白バイのドル箱橋。

 このドル箱橋では50ccが狙い撃ち。75キロぐらいで流れてる中で、50㏄たちは法律上は30キロで走らなきゃいけないわけで、こりゃ自殺行為なわけでして。50㏄たちは50~60キロで、それでもギャンギャン抜かれるという怖い思いをしながら、さらに白バイにつかまって20~30キロオーバーで切られるという「泣きっ面にハチ」ですよまさに。いっそのこと原付一種通行禁止にした方が50㏄も車も安全が(そして50㏄ライダーの免許点数も)守られるような気がする。

 そんな不条理がまかり通っているのは、まぁ「順逆無一文」に詳しかったりするのでそちらを見ていただきたいのですが、この路線で捕まった50㏄ライダーが思わず口にする言葉が「Gimme a Break!」ですね。

 この同じ国道246で、筆者も同様にGimme a Break! な体験をしました。先ほどの橋を渡り神奈川県側を南下していくと、東名高速の横浜青葉インターに差し掛かるのですが、ここでなんと60キロだった速度制限が50キロに下げられています。もちろん、秘密にされているわけではありません。普通に50の標識が掲げられているのではありますが、なにせとっても見通しの良いド直線の2車線路、いったいなぜ50キロ制限になっているのかは不思議でなりません。そしてもちろん、ここでネズミやってます。ま、やるよね。絶対つかまえられるもん。ネズミやってる手前の信号からはちょっと下り坂だからスピードも乗りやすいし、自然に走ってて50キロしか出てないってことは、まず考えにくい。

 でもここはまだいいんです。先までよく見てればネズミ部隊が見えるから、あそこで捕まっても100%の気持ちで「Gimme a Break!」とは叫べないでしょう。よく見てれば気づいてたはず、自分が見落としていたな、という悔しさが多少あるから。

 この同じ路線、夜中には覆面パトカー天国と化します。シルバー、白、黒のクラウン、マークXなど。うじゃうじゃ。2年ほど前に250ccに乗って気持ちよく流してたら、シルバーの旧型クラウンに83キロで御用となり、33キロオーバー一発免停。ぐぬ。33キロもオーバーしてたら当たり前だ、と思うなかれ。夜中の246の流れはそんなもんじゃないんだから。たまたま信号からのスタートで一番前にいただけのこと。そして理不尽(と思われる)50キロ制限のせいで免停&目ん玉飛び出る罰金。

 でも、この場面でも実は100%の気持ちで「Gimme a Break!」とは叫べなかった。なんてったって気持ちのいい夜に気持ちよく流して、子供が見ても覆面パトカーなのは一目瞭然の型落ちシルバークラウンに捕まってるんですもの。これに捕まるようじゃちょっと経験が足りなさすぎでしょう。自分のヌケっぷりを恨む余地があった。
 こんな覆面に捕まるんだったら普通のパンダパトカーにだって捕まるよ。パンダパトカーに捕まるようじゃ、運転してるときに周りにちゃんと気を配ってない証拠。危険だって忍び寄ってくる。たまたま忍び寄ってきたのが覆面なだけで、83キロものスピードを出してるんだったらもう少し周りに気を付けるべきだった。もちろん、安全のためにね。

 ところが先日。夜の土砂降りの雨の中を原付二種でこの同じ路線を走行中のこと。今度は72キロで捕まった! 22キロオーバー1万2000円。おいおい! Gimme a Break!!

 そうなんです。この言葉は「おいおい、ちょっと待ってくれよ!」という意味です。この原付二種で捕まった時は、たった(なんて言っても22キロも違反してたら大犯罪だけど246の流れの速さを考えるとやっぱり「たった」)72キロで走ってて、そもそも4ストの原付二種で急加速もできないし、決して交通の流れを乱すような走り方はしてなかったはず。なのに雨の中、黒いクラウンに御用。この状況下で、この天気で、72キロで走る原付を捕まえて2点と1万2000円をむしり取る……マジでGimme a Break!! なシチュエーションですね!

 だって速度制限が60キロだったら12キロオーバーで、メーター誤差なども考えたら取り締まりの対象にはならないような超過。だけどここだけ50キロ制限だから22キロオーバーで切れるわけで。彼らもホクホクなんですよ。
「なんでここだけ50キロなのさぁ!」と交通規制そのものに対する疑問を言っても、警察官は常套句「我々は取り締まる係で、速度を決める係ではないので」と答えるばかり。
 ぐぬー! 憎らしい!
 その言い訳するならさ、こちらの違反に対して「危ない」って言うなよな。危ないかどうか判断するのはあなた方の係じゃないでしょう? 取り締まるだけの係なんだから。危ないかどうかの判断ができるんなら、不当に低い速度制限区間を「危なくない」という判断もできるはずだもの。

 いやいや、話がそれました。

 Gimme a Break(ギミ ア ブレイク)とは、「Give me a Break」(ギブ ミーア ブレイク)を早く発音した言葉。Breakは、止まるためのブレーキのBrakeではなく、ボクシングなんかで対戦相手と絡まっちゃったときに審判が言う「ブレイク!」と同じBrakeで、意味としては「小休止」といった感じ。「Give me」は「僕に下さい」だから、直訳すると「僕に小休止を下さい」。日本語でも同じような状況で発する「ちょっと待ってくれよ!」とそっくり同じ表現ということになります。
 そして「ちょっと待ってくれよ!」に続く言葉は大抵「カンベンしてくれよ!」であったり「いくらなんでもそりゃねーでしょうよ!」だったりすると思います。「カンベンして」は、違反を見逃してくれって意味の「勘弁」ではなく、もっと感情的な「カンベンしてよ~っ!」的ニュアンスですよ。

 まぁ、雨中の72キロオーバーは全然カンベンしてくれませんでした。でもね、飛ばしたくなるような気持ちの良い夜だけでなく、本当に危険な状況が起きやすい雨の夜中でも取り締まりしてるのは良いと思う。ただ覆面でやるなよなー。パンダでやれば僕みたいに「Gimme a Break!」と叫ぶ人を生み出すことなく事故を未然に防げるじゃーん。

 グルリと話を強引に戻して。
 MT-09には僕も乗りました。もんすげー楽しくて、もんすげー速いですよ。自制心をもって接さないと夜中の246で一発免取も夢ではありません。ハイパワーモードにしとくとレスポンスも半端じゃなく、ジワッとアクセルを開けてもグワッとフロントが離陸したがる。まさに「ちょっと待って!」「Gimme a Break!」的な激烈パワーデリバリー。MT-09の場合はパワーモードを低いのに替えれば「ちょっと待って」くれますけどね。

 一方でMT-07はパワフルで楽しいけれど、「いや、ちょっと待ってくださいよ~(笑)」ってほどのじゃじゃ馬ではないと聞いています。個人的にはそっちの方が好みかも。

 MTシリーズはこの後、MT-04が出ます。ハイパフォーマンス400ccシングルで車重は100キロを切るそう。SDR200の4スト版といった感じかな。値段的にもKTM390DUKEと真っ向勝負だそうですよ。普通二輪免許でも乗れるMT(マスター オブ トルク)マシン、楽しみですね!!! なぁんていうガセネタを最後に付け加えておきます。
↑重ねて言いますが、MT-04のクダリはガセネタです! 僕の妄想! でも、出るといいな! てんてこ舞い中のヤマハの皆さんにGimme a Break! と言われちゃったりして(笑)。


筆者 
マイドル・タフネス


63万キロ走ったスーパーフォアを愛車に、都内の夜間バイク便に従事。最近出入りしているジェネシスカフェでMT-09に一目惚れ。しかし仕事を考えればハイオクは辛いだろう、とMT-07にしようか悩み中。愛称は「ジラフ」、好物はナポリタン、口癖は「ちょっと待ってくれよ~」


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