いや〜、わりと本気で焦りました。
だって家の前にいつも置いてあるバイクの姿が消えてるんですもん。
家族の誰かが乗ってっちゃったのかな？と一瞬思うも、その家族は目の前にいるし、カギは自分がしっかり持ってるし、じゃぁなんでここにあるはずのバイクがないんです？ってね。

　あれ？　っと思ったその瞬間、頭の中で総スキャンが高速で始まるわけですよ。
　最後に乗ったのは誰だ？　自分だ。てか昨日バイクに乗ってたっけ？　うん、昨日の朝のこの時間にバイクで出かけてったよなぁ。どこ行ってたんだっけ？　いつもどおり駅前まで出かけてって・・・、って自分、普通に帰ってきてるし。あれ？　あれ？　あれー！？
　ややパニックになっているため、脳内高速スキャンもテキトウなまま、あまり導き出したくない回答『もしかして：盗まれた』がチラチラとよぎってきます。
　いや、そんなまさか、盗まれるような治安の悪い地域じゃない。近所でバイクが盗まれた話とか聞かないし、そもそもこのバイク古いし安いし珍しくもないし。いや、かえって普通のバイクが狙われるのか？　そういえば最近、買取チラシがくくりつけられてたな。うわ、まさか、まさか・・・！？
　バイクが置いてあるべき空間を焦点の定まらない目で見つめながら、よくない方向へと思考はどんどんシフトしていきます。
　警察に連絡しなきゃ、バイク屋さんに盗品情報問い合わせなきゃ、バイク盗まれちゃたよーってSNSで流さなきゃ、なんで、なんでこうなった！！！

・・・この間ほんの数秒。一瞬にして頭の中は最悪の事態でいっぱいになりました。
　血の気が引く音を聞きかけたところで、背後からぽつりと神の声「あぁ、そういえば昨日歩いて帰ってきてたよね？」・・・！？

　そうでした。バイクで出かけたはいいものの、急な話で飲み会に合流となり、その後は飲酒運転になってしまうために駐輪場にバイクを置いたまま徒歩で帰宅したんでありました・・・。
　はい、お酒飲んでるからそんな記憶もうっすらぼんやりになってました。
　あぁぁ、バイクはなくなったんじゃない、置いてきたんだ！！　うおぉぉぉぉぉ！！
　よかった！　盗まれてなくてよかった！　ぼろっちいバイクだけど、やっぱなくなったらものすごく悲しいよ！　いやーあぶなかった！（何が）
　地獄から一気に天国へ引き上げられて喜びに浸るもまた一瞬。
　バイクで出かけるつもりで予定していた時間がみごとにずれ、ダッシュで目的地へ向かわなければならない事態へと、今度は別の地獄が待ち構えていたのでありました。

酒は呑んでも呑まれるな。

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