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第48回『連鎖式点灯方向指示器』


 いくつかのマスコミが報道していたので、ご存じの方も多いかと思うが、クルマやバイクで流行の兆しがある「シーケンシャル」点灯方式のウインカーが日本でも正式に認められることになった。

 かつて大型トラックのリアウインカーなどで流行ったことのあるシーケンシャル点灯方式のウインカー。当時は、通常の規格サイズのウインカーを片側に3コぐらい並べて取り付け、端から順に点灯していき、曲がる方向を示唆するという方式が一般的だったが、発光点が移動してしまうことや、点灯面積の変化ということにクレームがつき、いつの間にか規制されて一時の流行で終わってしまっていた。

 シーケンシャル点灯方式がここに来て見直されるきっかけとなったのはLEDランプの普及がある。現在普及してきたLEDランプはいくつかのLED光源をひとつにまとめて一つのユニットとしていることから、この一つ一つの発光をコントロールしてみよう、というのは誰でも思いつきそうなところ。

 また、最近のクルマやバイクではウインカーもデザインの一部として利用されることが当たり前となってきたことから、シーケンシャル点灯方式が復権するきっかけとなったのだろう。すでに一部の外車では標準で装備しているモデルもあり、二輪車でもバックミラーと一体化したりボディに埋め込んだりする場合に、単純な丸や四角形の発光源よりも、曲がる方向をイメージさせるバー状や、矢印などのデザインとした方が安全性にも優れている部分があるのも確かだ。

 導入が決まった背景にあるのは、国連欧州経済委員会(UN/ECE)の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で採決されている車両等の型式認定相互承認協定だ。協定そのもののスタートは、国連で1958年から始まっていたと言うから自動車の爆発的な普及期以前にすでに作られていた協定で、クルマやバイクの各装置に世界共通基準を作ろうという動きだった。ちなみに、平成26年6月現在、クルマやバイク関連の装置および部品関連で、133の項目が相互承認の対象となっているという。そしてこれまでのところ日本が採用したのはそのうちの54規則(基準)となっている。

 正式名称は「車両並びに車両への取付け又は車両における使用が可能な装置及び部品に係る統一的な技術上の要件の採択並びにこれらの要件に基づいて行われる認定の相互承認のための条件に関する協定」。自動車の装置ごとに安全と環境に関する基準の国際調和及び認証の相互承認を推進しようということで作られている協定だ。この協定に基づいて承認された装置は、協定締約国間では自国の製品と同じ条件で取り扱われるというもの。ちなみに現在、ヨーロッパ各国を中心にアジア、オーストラリア、アフリカなど50ヵ国、1地域が加入している。アメリカは加入していないが、基準の制定、改訂を行うフォーラム(WP29)には参加している。

 バイク独自の関連項目では、これまでに騒音、施錠装置、タイヤ、制動装置、後写鏡などが採用され、ヘルメット及びバイザー、排出ガス規制、灯火器、灯火器の取付、前照灯、ハロゲン前照灯、交換用消音器などが残っている。

■国土交通省 報道発表資料
http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha07_hh_000163.html

「装置型式指定規則」及び「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」等の一部改正について

 自動車の安全性の向上及び国際的な基準調和の観点から、今般、国連の「方向指示器に係る協定規則(第6号)」、「車幅灯、尾灯、制動灯、補助制動灯、前部上側端灯及び後部上側端灯に係る協定規則(第7号)」、「電波障害防止装置に係る協定規則(第10号)」、「停止表示器材に係る協定規則(第27号)」等に関し、相互認証協定に定める規則改定手続きを経て、国内基準に導入することとしました。

 このため、「装置型式指定規則(平成10年運輸省令第66号)」及び「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(平成14年国土交通省告示第619号)」等を改正し、公布・施行しますので、お知らせします。

(改正の詳細は別紙参照)

■別紙

自動車基準の国際調和、認証の相互承認等に関する「装置型式指定規則」及び
「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」等の一部改正について

1.背景

 自動車の安全基準の拡充・強化を進めるとともに、自動車の安全確保に関する国際的な整合性を図るため、我が国は平成10 年に国連の「車両等の型式認定相互承認協定」(以下「相互承認協定」という。)に加入し、その後、相互承認協定に基づく規則(以下「協定規則」という。)について段階的に採用を進めているところです。

 今般、我が国が採用している「方向指示器に係る協定規則(第6号)」、「車幅灯、尾灯、制動灯、補助制動灯、前部上側端灯及び後部上側端灯に係る協定規則(第7号)」、「電波障害防止装置に係る協定規則(第10号)」、「停止表示器材に係る協定規則(第27号)」等の改訂が、国連欧州経済委員会(UN/ECE)自動車基準調和世界フォーラム(WP29)第162回会合において採択されており、今後、相互承認協定に定める規則改定手続きを経て、平成26年10月9日に当該改正案が発効される予定となっております。

 これを受けて、「装置型式指定規則(平成10年運輸省令第66号)」及び「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(平成14年国土交通省告示第619号)」(以下、「細目告示」という。)等の一部を改正することとします。

 これらの改正により、車両安全対策が強化されるとともに、自動車・同装置の国際流通の円滑化、生産・開発コストの低減等がより一層図られることに伴う効率的な車両安全対策の推進が期待されます。

2.改正概要

(1)装置型式指定規則の改正

電波障害防止装置に係る協定規則、停止表示器材に係る協定規則の改訂に伴い、第5条(指定を受けたものとみなす特定装置)の改正を行うこととします。
【改正概要】
○第5条(指定を受けたものとみなす特定装置)関係
・「電波障害防止装置」及び「停止表示器材」について、協定規則が改訂されたことに伴い、規則番号について所要の変更を行います。

(2)細目告示の改正

[1] 方向指示器(別添73関係)
「方向指示器に係る協定規則(第6号)」の改訂に伴い、以下のとおり改正します。
【適用対象】
○専ら乗用の用に供する自動車、貨物の運送に供する自動車及び被牽引自動車に備える方向指示器(種別1、1a、1b、2a 又は2bに限る。)に適用します。
【改正概要】
○自動車の前部又は後部に備える方向指示器(種別1、1a、1b、2a 又は2bに限る。)について、一定の要件を満たすものに限り、連鎖式点灯※(シーケンシャル点灯)により点滅することができることとします。
※連鎖式点灯とは、灯火の個々の光源が予め決められた順序で点灯するように配線された接続により点灯することを指す。
【適用時期】
施行日より適用します。

[2] 車幅灯、制動灯(細目告示第134条、第212条、別添58、別添70関係)
「車幅灯、尾灯、制動灯、補助制動灯、前部上側端灯及び後部上側端灯に係る協定規則(第7号)」の改訂に伴い、以下のとおり改正します。
【適用範囲】
○自動車に備える車幅灯及び制動灯に適用します。(従前から変更なし。)
【改正概要】
○前部霧灯と兼用の車幅灯の最大光度値について、前照灯に組み込まれた車幅灯の最大光度値と同等であることを明確化します。
○後部上側端灯と兼用の制動灯について、双方が同時に点灯した時の光度は、後部上側端灯のみを点灯した時の光度に対し5倍以上であることとします。
【適用時期】
施行日より適用します。

[3] 電波障害防止装置(細目告示第21条、第99条関係)
「電波障害防止装置に係る協定規則(第10号)」の改訂に伴い、以下のとおり改正します。
【適用範囲】
○大型特殊自動車及び小型特殊自動車を除く自動車(外部電源に接続して原動機用蓄電池を充電する機能を有するものに限る。)に備える電気装置に適用します。
【改正概要】
○電気自動車等の充電システムについて、ESA(車載用電気電子部品)から発生する電源ラインにおける高周波放射、電圧変化等のエミッションに関する試験手法の規定を追加します。
○電気自動車等の充電システムについて、電源ラインに沿って伝導するサージやバースト等に対するESAのイミュニティに関する試験手法の規定を追加します。
【適用時期】
平成29年10月9日以降に新たに型式の指定を受ける自動車に適用します。

[4] 停止表示器材(細目告示第66条、第144条、第222条、別添77関係)
「停止表示器材に係る協定規則(第27号)」の改訂に伴い、以下のとおり改正します。
【適用範囲】
○車中に常備し、昼間・夜間を問わず、停車中の車両があることを知らせるために、車道上に置く特定の停止表示器材に適用します。
【改正概要】
○従来の再帰性反射装置と蛍光材料からなる装置(タイプ1)に加え、蛍光再帰性反射材料のみからなる装置(タイプ2)を追加します。
○蛍光再帰性反射材料のみからなる装置の追加に伴い、色度範囲の見直しを行うと共に、試験条件を染色の耐候性試験条件(ISO105-B02)からプラスチックの耐候性条件(ISO 4892-2)に変更します。
【適用時期】
施行日より適用します。

[5] その他
○その他の協定規則について、誤記訂正、項目の整理等に伴う改訂がなされたこと等を踏まえ、必要な改正を行います。

3.公布・施行日
公布:平成26年10月9日
施行:公布の日


                ※


 頑張ってここまでちゃんと読んでいただいた方、訳の分からん文章と飛ばしてしまった方にも、ここからは今月も困ったちゃん達のニュース。

 今月の愁眉というか、開いた口がふさがらない困ったちゃんは、埼玉県警の巡査でした。なんとこの20代の巡査クン、8月の上旬、バイクを飲酒運転して交通取り締まりの現場に向かったのでした。しかも実際に取り締まりも行っていたというのですね。酒臭いことに気がついた同僚が検査させたところ発覚。その後の捜査で裏付けがとれ、10月10日書類送検の方針を決めたそうです。さすがに飲酒運転の取り締まりじゃなく、スピード違反の取り締まりだったというのがせめてもの救いなのでしょうか。

 それからすれば、京都府警の警務課の警部補などはまだ可愛いものです。9月4日、「交差点で動かないクルマがある」と3件も110番があり、駆けつけた警察官が見たのは、エンジンを掛けたままで運転席で寝ている警部補でした。この警部補、府警の武道の指導者を集めた意見交換会に出席後、知人と飲酒、マイカーで帰宅途中に酒が回って寝てしまったというもの。同日、お決まりの懲戒免職の発表コースでした。

 酒に酔っての失敗は警察官も同じ人の子、じゃ困るのですが。10月18日、兵庫県警の巡査部長は、飲酒後タクシーのドアをけって壊したと、器物損壊の疑いで現行犯逮捕。それも2台を立て続けに。乗車拒否にでもあったのでしょうか。「酒に酔っていて覚えていない」じゃ、すみませんね。監察官室長は「厳正に対処する」と。

 それにしても、日本は呆れるくらい酔っぱらいに超甘い国ですね。「酒によって覚えていない」で納得されてしまうのですから。本来なら、記憶を無くしてしまうような飲み方した時点ですでに十分犯罪なのではないでしょうか。その上で万が一、事件や事故を起こした場合、過失ではなく、全て故意犯として処罰するべきでしょう。「危険ドラッグ」もしかり。これだけ「危険ドラッグ」による悲惨な事故が起きている、というのに、まだまだ「危険ドラッグ」を使用して運転する人間がいるなど常識では考えられない。そのような状態でクルマを走らせることだけで、故意による殺人、または殺人未遂罪とするべきですよね。

 話が外れました。パトカーもやばいです。10月23日、愛知県警の巡査部長の運転するパトカーが交差点に止まっていたトラックに接触後、そのまま逃げていったというのです。勤務外の警察官の乗っていた自家用車、でもなく、制服姿の警察官の乗った捜査車両、でもなく、パトカーですよパトカー。正しく警察官の乗った。運転していた巡査部長によれば、「一瞬居眠りした感覚があったが、車に当てた記憶はない」とか。県警では「当て逃げの疑いもある」として捜査中だとか。ここはお隣の3千年だかの歴史のあるはずの某国じゃないんですから…。

 当て逃げがあれば、ひき逃げもある。10月24日、群馬県警は当て逃げ事故を巡り口論になった相手をクルマで引きずり転倒させ、約3週間の怪我を負わせたとして巡査部長をひき逃げの容疑で逮捕、懲戒免職にしたと発表。事件は7月のこと、信号で停車中のクルマに乗用車で追突、降りてきたドライバーが窓枠に手をかけた際、急発進して男性を引きずったというもの。口論になったのだとか。追突後の対応が想像されますな。

 毎回出ますが交通規制ミス。10月24日広島県警は広島市安佐南区の交差点で、実に21年もの間、誤って設置した道路標識を元に取り締まりを行っていたと発表。21年です21年間。記録の残っているのは、2009年1月以降の分のみで、それだけでも262件のミスが見つかり、運転免許取り消しや停止処分を受けた方も13人含まれているという。記録がすでに無くなっているという、それ以前の事案はどうなるのでしょう? 泣き寝入り。時効で済まされてしまうんでしょうか。

 取り締まりをしている警察官には、自分たちのやっていることが、ただただ職務の遂行というだけじゃなく、取り締まられる側にはそれぞれ人生があり、取り締まりにより人生を踏み外してしまう人もいるかもしれない仕事をしているという自覚を持っていただきたいもの。営業ドライバーさんじゃくなくても、万が一免許を停止される、取り消される、などということになった時の事の大きさ、重さに思いを至らす心を。

(小宮山幸雄)


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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