順逆無一文

第53回『目出度さも…』

 大阪に続き、東京モーターサイクルショーも盛況のうちに、無事終了しました。すっかり年に一度のバイクの祭典として定着したモーターサイクルショー(2011年はやむを得ず中止となりましたが)。入場者も年々増えて今や関西、関東合わせて延べ19万人もの人が訪れるほどの大きなイベントになりました。
 
 今年のモーターサイクルショーの会場で感じたのは、昨年にも増して若い方々の姿が多かったということ。若者のバイク離れが叫ばれて久しいですが、会場で見る限りは、いわゆる話題のリターン・ライダーの方々、40代、50代にも劣らぬ勢いで若い方々も来場している感じでした。彼女を連れた若者の二人連れも多く、中には、彼女に誘われて来たんじゃないかと思えるような微笑ましいカップルも目にしました。
 
 バイクの未来は明るい! と思える光景でした。
 
 これもそれも、二輪に関連する業界の皆様が奮闘努力しているおかげでしょう。なんとか若者たちの目をバイクに向けてもらおうという努力が、確実にボディブローのように効いてきているのでしょうか。地道な活動、本当にご苦労様です。

 
第31回大阪モーターサイクルショー2015
●公式入場者数
開催日 入場者数
3月20日(金) 10,690名
3月21日(土・祝) 26,872名
3月22日(日) 20,192名
合計 57,754名
(前回 55,016名 前回比 104.97%)
●出展者数・車両出品台数
出展者数 140社
車両出品台数 309台

 

第42回東京モーターサイクルショー
●公式入場者数
開催日 天候 入場者数 前回入場者 前年比
3月27日(金) 晴れ 28,339名 24,838名 114%
3月28日(土) 晴れ 55,191名 47,385名 116%
3月29日(日) 曇りのち雨 48,719名 41,607名 117%
合計 132,249名 113,830名 116%

●開催実績
開催年 出展者数 入場者数
2012年 148者 101,325名
2013年 141者 110,158名
2014年 122者 113,830名
2015年 121者 132,249名

 さて、この勢いなら二輪の世界が、再び広がりを取り戻せるのでしょうか。街中で毎日目にするバイクライダーの現実は…。
 
 無謀な速度でのすり抜け、反対車線へのはみ出し、自分勝手な俺様走り。クルマだって本来は同じように、人間が操っている乗り物ですから、似たようなものかもしれませんが、クルマは面でしか動けない乗り物です。その動きに運転者の性格、個性まではなかなか表れません。
 
 まあ、クルマだって明らかに殺気立っていたり、意地悪だったり、などの感情がオモテにまで表れてしまっているケースもまま見受けられますがね…。かといってバイクほどにちょこまかすり抜けが出来るわけじゃなし、対向車線に傍若無人にはみ出せるわけじゃない。それこそさまざまな感情を押し込めて、じっと我慢の子、で運転するしかない、ってことですよね。
 
 同じ交通社会を構成する一員でも、そこがバイクとは大きな違い。自分次第で、どうにでも走れてしまうところがバイク。それが素晴らしいところであり、はたまた難しいところでもあります。バイクを自由への翼にするも、凶器にするも、要は操る人間次第です。
 
 多かれ少なかれ、今も昔もバイクと言えば厄介者扱いされることの多い乗り物。自己中人間がライダーの十人に一人でも存在すれば、もうそれだけでバイク全体が「社会の迷惑」の烙印が押されることになる。実際、朝の通勤時間帯などを見れば十人に一人どころか、迷惑ライダーのオンパレード。一般の歩行者やドライバーの目から見ればバイクライダーのイメージは“セコイ”“ダサイ”“五月蠅い”“危ない”。
 
 せっかく若い方々の関心がバイクに戻ってこようとしているのに、こんな現状でいいのでしょうか。バイク乗りの仲間入りしても、早晩バイクに幻滅を感じてしまいませんか。そしてもうひとつ。とんでもない問題が横たわっている。
 
 バイクに乗ろうと思った。免許取った。念願の愛車を買った。さあ、バイクで出かけよう。
 
 でも、出かけたはいいが、街中なんかに駐めるところはない。途中で本を買ったり、お気に入りのウェアを品定めしたり、お茶を飲むことも出来ない。結局駐めるところがないからグルッと回るだけで帰ってきた。
 
 さあまた出かけよう、と思えます?
 
 観光地にツーリングに行けばいい。峠に走りに行けばいい。ファミレスにたむろすればいい。それだけでいいんですか、バイクって。これからバイクに乗ろうと思って入ってくる若い人達にそんな思いをさせてしまって。
 
 バイクライダーだって、きちんと自動車税だなんだと納税義務をきちんと果たしてきた交通社会の一員なのに、ある日突然、一方的に駐車環境の全てを奪われても、なんら行動を起こすわけじゃなく泣き寝入りしてしまった我々ライダー。バイクに乗っている人間として、バイクの真っ当な権利を主張することなく。本来なら暴動が起きても然るべきほどの行政の暴挙、だったというのに。
 
 駐車監視員に取り締まられても、影でグチグチ言っているだけで何一つ行動せず、逆に取り締まられなさそうなところをこそこそと探して違法駐車を繰り返す。

 これからバイクの世界に入って来ようとしている若い方々に、たかが駐車場問題ごときで犯罪者意識を与えてしまうなど、言語道断。
 
 こんな状況で「バイクって楽しいよ!」などと言えるわけがない。すまんな、ダメなバイク乗りで。
 
(小宮山幸雄)


小宮山幸雄小宮山幸雄

“雪ヶ谷時代”からMr.BIKEにかかわってきた団塊ライダー。本人いわく「ただ、だらだらとやって来ただけ…」。エンジンが付く乗り物なら、クルマ、バイクから軽飛行機、モーターボートとなんでも、の乗り物好き。「霞ヶ関」じゃない本物!?の「日本の埋蔵金」サイトを主宰する同姓同名人物は、“閼伽の本人”。 


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