おやびん道

それぞれの道には、それぞれの風土、気候、環境などを積み重ねた表情がある。それはまた人生にも似ている。道は人生、道の数だけ物語がある。野口おやびんが走って来た幾多の道を、想い出話と共に語ろうか。

第49回 湯河原パークウェイ/熱海新道



MAP


伊豆半島の東側海岸線から箱根・伊豆へのアプローチロードに関して、これまでいくつか書いたが、今回は未紹介の2ルートほかについて記す。ひとつは奥湯河原から湯河原峠に至る有料道路の湯河原パークウェイ(2輪車通行料330円、延長5.7km)。もう1本は熱海市の錦ヶ浦付近と伊豆スカイラインの玄岳ICとを結ぶ、熱海新道(かつて有料だったが97年に延長6.4kmの全線が無料開放された)。また、熱海新道に接続する“頼朝ライン”も面白い。

 湯河原から海岸線を離れ、山岳路経由で箱根または伊豆方面へ行こうとする場合、以前紹介した椿ラインが定石だ。無料だし、コーナリングを存分に楽しめる。だが、奥湯河原のT字路を右折して椿ラインに入らず、直進して湯河原パークウェイを利用するのも悪くない。俺も取材で何度も走った(個人的なツーリングは1、2回)。たまには異なる道でインプレ取りや撮影を、と考えてのことだ。有料で、距離も椿ラインより短く、撮影に適したコーナーは少ない。

 でも椿ラインより道幅はやや広いし大きいRのコーナーが多くて走りやすい。入ってすぐの区間は周囲が竹林で、その先のストレートの谷側には苔むしたコンクリートブロックが並んでいたりして、独特の風情がある。交通量は平日なら非常に少ない。取材で利用したときには、そのコンクリートブロックのある直線や終点の湯河原峠手前にある高速コーナーなどで写真を撮った。この道は、箱根や芦ノ湖に向かうときでも、伊豆に行くときでも、椿ラインを通るより距離も時間も短縮できる、というメリットがある(料金所は湯河原峠側)。

 そういえば、湯河原駅近くから市街地をパスして山側を走り、椿ラインや湯河原パークウェイへのアクセスとなる県道に出られるオレンジラインという道もある。かつては有料で、名称も湯河原新道、だったが、87年の無料開放後にオレンジラインの愛称が付けられた。延長は約3.5kmと短く、ストレートが多い。コーナリングを楽しむには物足りないが、見晴らしがよくて快適に走れる。有料の頃か無料になってからか忘れたが、2、3度利用したことがある。



湯河原


湯河原
最近は女性に人気の高い湯河原は小さな温泉町。写真右の奥に見える山を越え湯河原パークウェイは箱根へと向かう。※写真はすべてイメージです。

 熱海の錦ヶ浦付近と伊豆スカイラインの玄岳ICを結ぶ熱海新道は80年代から近年まで、頻繁に走った道のひとつだ。小田原から熱海までシーサイドを走って(有料の真鶴道路や熱海ビーチラインは海を眺めながら走れる爽快ルート)、伊豆スカへのアクセスに利用することも、逆に伊豆スカを走った後の帰路に選択することもあった。熱海の市街地を抜け、錦ヶ浦から伊豆スカを目指す場合、国道135号線のトンネルを過ぎてすぐ左折し、熱海新道に入る(正式には後述する料金所から玄岳ICまでの区間が熱海新道のようだが)。

 しばらくの間はタイトで急こう配のカーブが多く、コークスクリューのようなコーナーも2、3ある。また、また、右側には熱海城という観光スポットがあって、その天守閣が目に入る。取材時は当然、個人ツーリングでも立ち寄ったことはないが、その天守をバックにニンジャの止まり写真を撮ったことがあったなあ…。さらに上って行くとストレートが多くなる。別荘地帯を左手に見て先に進んだあたりに、昔は料金所があった。そこを過ぎると本格的なワインディングとなる。道幅はそれなりで、右に左に途切れなくコーナーが続く。

 低速のブラインドコーナーが多く、季節によってはぬれ落ち葉が散っていることもあるので、要注意だ。取材で利用する場合、時には違う道で、と考えてこの熱海新道で走り写真を撮ったことが何度もある(伊豆スカが霧や雨で撮影できないとき、熱海新道なら何とかなるかもと下ったら、希望的観測どおり曇りや晴れで、撮影できたことも多い)。途中にあるヘアピンか、玄岳IC手前のコーナーは、駐車スペースと適当な引きがあるので、走り写真が撮れるのだ。



熱海


熱海
熱海の海岸から右手を見れば熱海城。知っている人は多いけれど、行ったことは少ない不思議なスポット

 数年前、久しぶりに通ったら、昔と比べて路面が荒れ気味だった。でも、交通量は少ないし、ルートに組み入れることをおススメする。別荘地帯から少し上ったところ、料金所跡を過ぎてしばらく進んだ地点で熱海新道と交差する頼朝ライン、という道がある。熱海梅園前の交差点から熱海自然郷へと続くワインディングで、かの源頼朝ゆかりの古道だという。80年代半ばの頃、取材で熱海新道~伊豆スカを訪れた。ところが伊豆スカはお天気が悪くて、熱海新道を下ることにした。でも適当な撮影ポイントを見つけることができなかった。

 そこで、T字路になっていた脇道に入ってみた。それが頼朝ラインの梅園側だった。熱海新道より道幅が広くて路面もよく、距離は数kmと短いが、撮影に適した中速コーナーがあり、そこで複数の走り写真(数台絡みの)などを撮った。変化に富むコーナー構成で適当な長さのストレートも何本かあって面白く、中大型車でもスポーティな走りが楽しめる。その後、伊豆スカの天候が悪いときは頼朝ライン当てにすることも多かった。数10回は世話になっただろう。



頼朝ライン


頼朝ライン
頼朝ラインからは熱海の町を一望できるスポットも。

 熱海自然郷側でも4、5回、走り写真を撮影したことがある。梅園側のT字路から熱海に向けて少し下った地点にあるT字路を入ると、頼朝ラインの自然郷側だ。梅園側より道幅は狭く、コーナーもタイトで、路面もやや荒れ気味だった。あまり走りやすくはないが、駐車場が脇にあって走り写真が撮れるコーナーがひとつだけある。自然郷まで行ってみたことはないので、今度、熱海・伊豆方面に出かけた時は足を伸ばしてみようか、と思う。



野口眞一

野口眞一
1956年、7月生まれ。バイクに乗って40数年、バイク雑誌関係の仕事に就いて30数年。若い頃からバイクの旅が好きで、日本各地を走り回ってきた。所有するバイクは今となっては滅多に見ないトライアンフのサンダーバード(1996年型の水冷並列3気筒)で、18年乗り続けている。長く乗っている割には走行距離は少なめで7万5000km。

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