バイクの英語

第47回
「Bright Up Stairs
(ブライト アップ ステアーズ)」

ホンダの「コージェネ」って知ってますか?

 Co とGeneration をくっつけた造語で、Coとは「共に」とか、「二つの」という意味合い、Generation は「発電」や「生み出す」などという意味ですね。なのでコージェネレーション=コージェネは、二つの発電、なんていう意味をもったネーミングです。
 中身はというと、ガスで動く超高効率エンジンがあって、これに電気や熱を発生させ、効率の良いエネルギーを使いましょうよ、というシステムです。発電も自分でするから電気代が浮くし、災害時などには手動でもエンジンを始動できるのでライフラインが十分でない時も安心というわけです(ガスは必要ですが)。

 なんでこんな話から入るかって、このコージェネに使われているエンジンがとても頭が良いからです。いや、頭がいいのは設計した人か。
 高効率なエンジンといったらどんなのを想像しますか? すぐに思い浮かぶのはカブのエンジンでしょう。燃費を競う大会では1リッターのガソリンで何千キロも走ってしまうんだから驚きます。
 もう一つ高効率といえばNCシリーズのエンジンでしょうか。ロングストロークで十分な低回転パワーを稼ぎつつ、徹底したフリクションロス低減を求めていますね。ローラーロッカーアームやらピストン側面のコーティングやら…… NCはツーリングペースで走っていれば本当にリッター30を超えますので、文句なしに高効率でしょう。話は逸れますが、今は750ccになってファイナルがロングになったため700以上におとなしい印象の乗り物になったNCですが、700の頃のは峠道でも侮れない実力を持っていますよ。乗り手次第でワインディングはかなりのペースが可能なのです。多少の燃費悪化には目をつぶって、750のファイナルを700のにしたらかなり楽しいはずです。
 逸れましたね、すみません。そんなわけで、高効率エンジンとはいかにフリクションを少なくするかでしょう、と思っていたら、それでもバイク用である以上は楽しさやパワー感を求めなければいけないわけで、高効率だけに焦点を当てるわけにはいかないということに気づきました。じゃあフィーリングとかまるっきり関係のない高効率エンジンとはどんなのだろう……
 コージェネに入っているエンジンはOHVの水冷シングルで、EXlinkと呼ばれるもの。排気量は? という質問が難しく、単純に排気量で言えば163ccなのですが、吸気量は110ccでしかないんです。
 ??? そんなことってある?? 実は以前に実物を見てとても感動したのですが、最近ホンダのウェブサイトのコージェネの所にこのエンジンについて詳しく解説されていることに気づきました。もとはアトキンソンサイクルっていうシステムだったそうですが、それを進化させたのがこのEXlink。メインのクランクに三角形のオムスビみたいのがついていて、その一端がまた別のクランクと繋がっていることで、吸入行程と排気工程でストロークが変わっているのです。言葉で説明しても良くわからないから、ぜひホンダWEBサイトの動画を見ていただきたいですね。

 これ考えた人、マジ、Bright Up Stairs!!


 2階部分が明るい! というわけですね。2階とは頭、すなわち脳みそです。Bright Up Stairs とは、頭が良い、という意味の言葉ですが、頭が良いというとなんだか味気ない気がします。西の方の言葉でいう「コージェネのエンジンはカシコが作ったな」といったニュアンスでしょうか。このカシコとは「賢い人」を指しているわけですが、東の方ではあまり使わない表現かもしれません。

 他にもBright Up Stairsな話に出会うことがあります。例えば英国の「左折可」ルール。イギリスでは例え信号がある交差点でも、左折はいつしてもOKなのです。もちろん右からくる車が優先ですが、何も来ていないような時は赤信号でも左折が許されています。確かに、直進や右折は左方からくる車も気にしなければいけませんし、それもOKにしてしまったらそもそも信号の意味がないですが、確かに左折なら例え赤信号でもわりと安全にできますね。このルールができてからは、青信号だからといって減速せずに交差点に突っ込んでくる車が減ったといいます。例え青信号でも横道から左折車が出てくるかもしれないわけですから、やっぱり慎重になるのでしょう。効率が良くなっただけでなく、危機予知能力も上がったという結果で、これはなるほどと思いました。このルール導入した人、Bright Up Stairsですね。

 語源は正直わかりませんが、Up Stairsが賢さを指すのなら、1階部分は心に当たるのでしょうか。心も明るく、頭も明るければいいですね。心が暗く、頭だけ明るいとずるがしこいことを考えてしまいそうです。
 反対にあまり賢くない人のことはDimといいます。暗いというか、薄暗いといった印象でしょうか。考える能力のあまり高くない人というか、考えることを放棄する人というか、そんな印象の言葉です。
ま、「アイツはDimだから」というような言葉を使っているようでは1階部分が暗くなってしまうので、「おお、カシコ!」と思った時にBright Up Stairsを使ってもらえれば幸いです。


筆者 
ナッツト・アズーロ

メカ好きの68歳。車体もエンジンも整備やチューニングをするのが大好き。ヨシムラのチューンドエイプで、カムチェーンの外側がテンショナーと擦れる時のフリクションを低減するために磨かれていたのを見て思わず「Bright Up Stairs!」と叫んだ。ビール大好き。つまみはアーモンド。愛車はCBR600F4i。


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